AIが客を呼ぶ店

同じ店が、桜川では43%、なんばでは0%——地名とAI言及率の実測レポート #2

この調査について

前回のレポート(#1)では、大阪市大正区のパーソナルジムを対象に、AIの回答が一部の店に偏ること、そして質問の地名を変えると顔ぶれが激変することを確認しました。

今回はその検証第2弾として、隣接する桜川・なんばエリアで同じ計測を行いました。「地名とAIの紐付け」の現象が、より近い距離でも起きるのかを確かめるためです。

← レポート #1: 大正区のパーソナルジムをAIに300回聞いたら、おすすめは「一強」だった

調査方法

  • 対象AI: ChatGPT(OpenAI API・web検索有効)、Gemini(Google検索グラウンディング有効)
  • 質問: 「{地名} パーソナルジム おすすめ」「{地名} パーソナルトレーニング 人気」「{地名} パーソナルジム 女性 おすすめ」の3パターン × 地名2種(桜川/なんば)
  • 試行: 各パターン10回(5回×2AI)、合計60リクエスト
  • 指標: AI言及率 = 全回答のうち、その店の名前が挙がった回答の割合
  • 実施日: 2026年8月5日(同一日に一括計測。前回調査とは実施日が異なります)
  • 質問文は前回調査と同一テンプレートを使用(地名間の比較可能性を維持するため)

結果1: 同じ店が、桜川では43%、なんばでは0%

桜川駅徒歩圏のあるパーソナルジムは、「桜川」を含む質問では言及率43%——エリア上位グループの常連でした。ところが、質問の地名を「なんば」に変えると0%。30回聞いて1回も名前が挙がりませんでした。

質問した地名言及率言及回数
桜川43%13/30
なんば0%0/30

桜川駅となんば駅は徒歩でも行き来できる距離です。それでも、AIの中では別世界でした。

言及された13回はすべてGemini経由で、AIは一貫してこの店を「桜川駅徒歩1分の店」として紹介していました。AIは店を「地名単位」で記憶しており、紐付いていない地名の質問では、実力と無関係にその店は存在しない——前回の大正区調査(王者が81%→2%に消えた現象)と同じ構造が、より近い距離で再現された形です。

結果2: 50m先の2店で、10回と0回だった

もうひとつ、今回の調査で出た数字があります。

桜川1丁目には、約50mの距離で2つのジムが営業しています。同じ町内、同じ街区。「桜川 パーソナルジム おすすめ」などを30回聞いた結果は——

店舗「桜川」30回中の言及
全国チェーンの女性専用ジム10回
個人経営のパーソナルジム0回

片方は3回に1回名前が挙がり、もう片方は一度も挙がりませんでした。

さらに奇妙なのは、この2店の「地名の持ち方」です。前者は「なんば」で聞くと30回中20回挙がります。桜川でも、なんばでも出てくる。後者は、なんばで1回挙がっただけでした。

面白いのはその1回です。AIが後者を紹介した唯一の回、その紹介文には店名のあとに「(難波)」と添えられていました。住所は桜川なのに、AIは難波の店として認識していたわけです。

違いは何か。前者はGoogleマップの口コミが450件を超え、チェーンとして多くの紹介記事や比較サイトに載っています。後者は口コミ十数件で、AIが参照する比較記事・まとめサイト群にはほぼ登場しません。

AIは現地を歩けません。店の実力も、接客も、設備も見られない。見ているのは「ネット上でどれだけ語られているか」だけです。

そして語られていない店は、自分の住所とは別の地名に紐付けられることがある。

結果3: ChatGPTとGeminiで、見えている世界が違う

今回の調査でも、AIによる非対称がはっきり出ました。

項目ChatGPTGemini
桜川の上位ジム(43%)への言及0回13回
逆質問(店名を挙げず聞き返した割合)70%0%
  • 桜川の上位ジム(43%)の言及は、13回すべてがGemini。ChatGPTでは0回
  • ChatGPTは30回中70%で「どのエリアですか?」等の逆質問を返し、店名を挙げる回答自体が少ない
  • 前回調査と合わせると、この店はChatGPTに合計180回聞いて言及0回

Geminiは Googleマップ・自社サイトを参照してローカル店舗を答えやすく、ChatGPTは既存のウェブ記事を重視し、慎重に聞き返す——同じ「AI検索」でも、対策すべき場所がAIごとに異なることを示しています。

まとめ

  • 「地名とAIの紐付け」は大正区だけの現象ではなく、桜川・なんば間という至近距離でも再現された
  • 語られている量の差が、そのまま言及率の差になる。50mの距離でも、10回と0回に分かれる
  • ChatGPTとGeminiでは参照する情報源が異なり、片方だけに存在しない店が生まれる

自分の店が「売りたい地名」でAIに紐付いているか。それはどのAIでか。——実測すれば、正確に分かります。

次回は、調査対象の店舗に対して行っている情報整備の施策と、その後の言及率の変化を報告する予定です。

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本調査は個人による実測であり、AIの回答は日々変動します。数値は調査実施日時点のものです。
前回調査(大正区・2026年8月1日実施)とは計測日が異なるため、エリア間の数値比較には日付差の影響が含まれ得ます。
調査手法についての質問は、Instagram(@ai_yobu_mise)までどうぞ。

訂正履歴

2026-08-09
公開時、「100m先の2店で25倍違った」として言及率50%と2%を比較していました。 この2つの数値は「桜川」「なんば」両方の質問60回を合算したものです。 本記事の主旨は「AIは店を地名単位で覚えている」というものであり、 地名を混ぜた数値で地名の話をするのは矛盾でした。 桜川の質問30回に限定した数値(10回と0回)に修正しています。

あわせて倍率表現を実数表記に改めました。少数回の計測では、 1回のヒットの有無で倍率が大きく変動したり、計算できなくなったりするためです。 今後、当サイトの数値は「◯回中◯回」の実数を基本表記とします。

また、距離の記述を実測に合わせて約100m→約50mに修正しました。